最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)915号 判決 1969年11月13日
上告人
釜谷ウメ
釜谷英子
代理人
浜辺信義
被上告人
対馬ミヨ
対馬小一
芳賀けい子
代理人
内藤康男
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人浜辺信義の上告理由について。
上告人の所論の将来の給付請求は、原審の口頭弁論終結時において、その請求の基礎となる権利関係を確定することのできない将来の給付請求権を訴訟物とするものであつて、不適法であるとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用しえない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(松田二郎 入江俊郎 長部謹吾 岩田誠 大隅健一郎)
第二審判決理由(抄)
なお、第一審原告らは当審において、あらたに第三次請求として、第一審被告らの借地権の終期である昭和五〇年七月三一日を期限として第一審被告らに対し建物収去、土地明渡を訴求するが、右請求が肯認されるためには借地権者である第一審被告らが借地権消滅に接着してなした更新請求に対し、第一審原告らが遅滞なく異議を述べ、しかも、その異議について正当の事由を具備することが必要であるところ、右正当事由は土地所有者と借地人が当該土地を必要とする度合などを諸般の事実関係に照らして比較衡量のうえ、決定されるものであつて、その事実関係は極めて浮動的なものであることは多言を要しないから、なお、将来五年有余も借地権がある現段階では第一審原告らの更新拒絶の正当事由を肯定するに足る事実を予見することはとうてい不能というべきである。
すなわち、第一審原告らのこの点の請求は、その請求権を基礎づける事実関係がいまだ不確定で、これを補捉できないものであり、したがつて、その請求は予め、請求をなすに必要な要件を具備していないものといわなければならないから、不適法として却下を免れない。